一筆☆啓上

観た映画、読んだ小説の印象を綴ります

2023-01-01から1年間の記事一覧

映画「イタリア旅行」(1954)

本作を評しゴダールは「男と女と一台の車とカメラがあれば映画が出来る」 と語ったそうだ。従って、もしロッセリーニがこの「イタリア旅行」を撮っていなければ、ゴダールの「勝手にしやがれ」は作られていなかったかもしれず、またもし「勝手にしやがれ」が…

映画「クルーシブル」(1996)

数々の秀作を監督したエリア・カザンがアカデミー賞の式典で名誉賞を贈られた際、俳優のリチャード・ドレイファスやエド・ハリスがそれに反対する姿勢を見せたのは記憶に新しい。かつてカザンは、ハリウッドを含めてアメリカ中を席巻した「赤狩り」において…

映画「ドラゴン・タトゥーの女」(2011)

話題になっていたスティーグ・ラーソンの原作は文庫化されたときに目を通した。調査員リスベット・サランデルのキャラは大変魅力的に感じたが、頁が進むにつれて明らかになる真相には気が滅入るばかりで読後感は最悪だった覚えがある それを映画化した本作に…

映画「タクシードライバー」(1976)

デ・ニーロもアル・パチーノも歳を取るほどに演技が過剰になるのを見るにつけ、やっぱり彼らが一番輝いていたのは70年代だったよなぁ、と何気に思う今日このごろ。振り返ってみればデ・ニーロは「アンタッチャブル」パチーノは「スカーフェイス」、このデ…

映画「リトル・チルドレン」(2006)

原題をそのままカタカナ読みにしたタイトルの直訳は「幼児」となるが、本作の内容からすると、そこには「ピーターパン症候群」「アダルト・チルドレン」と同様に、大人になりきれぬ大人のニュアンスが含まれているのだろう ストーリーは、生活にゆとりのある…

映画「地獄の黙示録 特別完全版」(2001)

「地獄の黙示録」オリジナル版が劇場公開された当時中学生だった私は、映画マニアやミリタリーマニアの級友らがを本作を象徴するヘリコプターでの襲撃シーンの凄さを口角泡を飛ばしながら語っていた姿をよく覚えている ヒロイックなワーグナーの音楽をバック…

映画「雨のしのび逢い」(1960)

周りのことなどお構いなくスマホの画面を一心不乱に見つめる人々の目には、道端に咲く花の可憐さも夜空に浮かぶ月の輝きも映るはずはなく、いずれは「情緒」という言葉も死語になる日が来るのではないか。最近はふと、そんなことを考える 本作はまさにその「…

「湖の女たち」 吉田修一 著

特に吉田修一のファンというわけではないのだが、たまたま目に留まった本書の紹介記事に関心を抱き、文庫の発売日に書店で買い求めた 琵琶湖の畔に建つ高齢者医療施設で寝たきりの老人が不慮の死を遂げた。事故か殺人か、警察は決定的な証拠を掴めず捜査は難…

映画「昼顔」(1967)

60年近く前の作品とあって、表現自体は現在の映画と比較してオブラートに包まれてはいるものの、貞淑な人妻が体を売ることで抑圧していた「自分自身」を解放するという内容は結構衝撃的だ 昼顔(セヴェリーヌ)が娼館のマダムにキスをしようとする場面が出て…

映画「マドモアゼル」(1966)

某映画評論家が自身の著作本のなかで、この作品を「トラウマになる映画」に挙げていたと聞くが、私はそういった類の解説書を滅多に読まないのでそこにどんなことが書かれていたのかは全く知らない フランスの山間部に在る小さな村。イタリアから出稼ぎに来た…