一筆☆啓上

観た映画、読んだ小説の印象を綴ります

2023-11-01から1ヶ月間の記事一覧

「日没」桐野夏生 著

岩波で桐野夏生の作品に触れるというのも何か格別な思いだ。それは例えるなら、大衆に人気のある崎陽軒のシウマイ弁当を横浜中華街の老舗・聘珍楼(現在は閉店)で食す感覚に近いかもしれない エンタメ系小説を書く作家・マッツ夢井のもとへ文化文芸倫理向上…

「同調者」モラヴィア 著

4K版「暗殺の森」が公開された。残念ながら劇場へは足を運べないが、原作を読み返したうえで改めてDVDを鑑賞することにした マルチェッロは少年の頃から自分のなかに潜む異常性に恐れ慄いていた。そして13歳の時に決定的な出来事が起きる。彼に性的な…

映画「赤い天使」(1966)

数ヶ月前に観た「清作の妻」は、私が監督・増村保造に抱いていたイメージをいい意味で覆す傑作だった。そして今回鑑賞したこの「赤い天使」の内容もまた、それと肩を並べる重厚さであり、彼の類まれな演出力に対してはただ感嘆する以外になかった 日中戦争最…

映画「欲望という名の電車」(1951)

数日前、「欲望という名の電車」の新たな舞台公演が発表された 主役を任された沢尻エリカについて、私はかろうじて名前と顔が一致するくらいで、出演した映画やドラマの類は一切観ていない。従って彼女の俳優としての力量がどの程度なのかは全く見当もつかな…

映画「禁じられた情事の森」(1967)

カーソン・マッカラーズが著した「心は孤独な狩人」の高い完成度には唸らされた。そこで今回はその天晴な処女作に続き、彼女が筆を執った「黄金の眼に映るもの」の映画化作品を改めて鑑賞することにした アメリカ南部の陸軍兵舎。レオノーラと同性愛者の夫ウ…