一筆☆啓上

観た映画、読んだ小説の印象を綴ります

2024-01-01から1年間の記事一覧

「老人と海」ヘミングウェイ 著

1920年代から30年代にかけて活躍したアメリカの作家たちを指す「失われた世代」という言葉の響きが、若い頃の私にはやたらと格好良く思え、それらの中心的存在だったヘミングウェイの小説に俄然夢中になった。当然、代表作「老人と海」にも目を通した…

「野生の棕櫚」フォークナー 著

小説におけるオールタイムベストに「八月の光」を挙げている私は、その著者フォークナーの文庫最新刊に当たる本作の発売を楽しみにしていた ミシシッピ州に属す架空の街(ヨクナパトーファ郡)を舞台に、様々な登場人物たちの人生が交錯するサーガ形式であっ…

映画「aftersun/アフターサン」(2022)

台詞に頼り過ぎず、流れのなかで観客のイメージを喚起するように企図された映画脚本こそが理想と考える私にとって、この「アフターサン」はかなり好みに近いカタチと言える 思春期を迎えた娘ソフィとその父親カラムのひと夏のふれあいを描いたストーリーは主…

映画「めし」(1951)

以前にも当ブログ内の記事に書いたのだが、私はいままで小津安二郎の作品をただの一本も観ておらず、それゆえ、彼にとっての「ミューズ」とも言える原節子については殆んど予備知識を持たなかった 夫との関係に倦み、淡々とした味気ない結婚生活に身も心も疲…

「一九八四年」オーウェル 著

オーウェルが書いた近未来世界から40年の節目を迎えたこともあって、今年読む最初の一冊には本作を選択した。この小説に目を通すのはもうこれで何度目かとなる。コンラッド「闇の奥」と同様、小生ごとき凡人では永遠にオーウェルの意図した真理へは辿りつ…

映画「波紋」(2023)

俳優・筒井真理子の存在は「淵に立つ」を劇場で鑑賞したときに初めて知った。あの作品で筒井が演じた人物は、或る出来事を境に、その前後でまるっきり別人になったかのように映り、そうした内面から滲み出す雰囲気のあまりに見事な変化は、ウェイト増加とい…

映画「日曜日には鼠を殺せ」(1964)

一度聞いたらついぞ忘れそうにない強烈なインパクトを持つ邦題は原作となった小説のタイトルがもとのようだ(原題は黙示録の一節「蒼ざめた馬を見よ」)。今回これを鑑賞しようと思い立ったのは他でもなく題名に惹かれたからである 観るに値するか、時間の浪…

映画「ワイルドバンチ」(1969)

以前から一度は観ようと思いつつ、なんだかんだと先延ばしにしてきた「ワイルドバンチ」をようやく鑑賞。ペキンパーの最高傑作として推す声も多く、期待は膨らんだが、かなり落胆させられる出来だった 冒頭と終盤の銃撃戦では如何にも「血まみれのサム」らし…

映画「鞄を持った女」(1961)

ズルリーニの映画は昨年「激しい季節」を鑑賞しており、その際に本作もリストへ登録した。両者とも年上の未亡人に恋心を抱く青年を描いたものだが、同じくズルリーニ演出で以前より観たいと思いながら未だ願いが叶わずにいる「高校教師」の内容も、アラン・…

映画「LOVE LIFE」(2022)

矢野顕子のあの特徴ある声が個人的に今ひとつ好きになれなくて、彼女の楽曲をまるで知らない。従って、監督・脚本・編集を担う深田晃司がインスパイアされたタイトル曲についてもこの映画を観るまで全く聴いたことがなかった。そんなわけで私のなかでは矢野…

映画「ジャイアンツ」(1956)

年明け最初に鑑賞する映画として、普段はどうしてもためらいがちな長尺のものを観ようと思い、かなり前にビデオを借りた記憶が残るのみで、内容自体はすっかり忘れてしまった本作をチョイスした アメリカ南部テキサスに広大な土地を所有する牧場主が東部出身…