一筆☆啓上

観た映画、読んだ小説の印象を綴ります

映画「aftersun/アフターサン」(2022)

台詞に頼り過ぎず、流れのなかで観客のイメージを喚起するように企図された映画脚本こそが理想と考える私にとって、この「アフターサン」はかなり好みに近いカタチと言える

思春期を迎えた娘ソフィとその父親カラムのひと夏のふれあいを描いたストーリーは主にふたりのやり取りで展開し、交わす会話から徐々に親子の背景が明らかになる。そこには事件性を帯びた出来事が突然起こりそうな漠然とした不安感などもうっすら漂っていて、思わず最後まで引き込まれてしまう

ソフィがカラムと一緒に歌おうとしたカラオケ曲がR.E.M.の「ルージング・マイ・レリジョン」だったりするので、舞台は携帯電話やパソコンがまだ一般には普及していなかった90年代初め頃の設定なのだろう。お互いに距離の取り方を探り合っているかのようにも見える彼らのコミュニケーションツールがハンディビデオという点が、時代をよく反映している

ソフィに扮したフランキー・コリオの表情や仕草が、「レオン」出演時のナタリー・ポートマンを彷彿とさせた。オーディションで選ばれた点も両者に共通する。コリオの存在無くして本作は成立しなかったに違いない。今後の活躍が大変楽しみである

【★★★★★★★☆☆☆】

  • "Aftersun" 102分 (英・米合作)
  • 監督:シャーロット・ウェルズ
  • 脚本:シャーロット・ウェルズ
  • 撮影:グレゴリー・オーク
  • 出演:ポール・メスカル、フランキー・コリオ

(2024-8)