小説(外国)
1920年代から30年代にかけて活躍したアメリカの作家たちを指す「失われた世代」という言葉の響きが、若い頃の私にはやたらと格好良く思え、それらの中心的存在だったヘミングウェイの小説に俄然夢中になった。当然、代表作「老人と海」にも目を通した…
小説におけるオールタイムベストに「八月の光」を挙げている私は、その著者フォークナーの文庫最新刊に当たる本作の発売を楽しみにしていた ミシシッピ州に属す架空の街(ヨクナパトーファ郡)を舞台に、様々な登場人物たちの人生が交錯するサーガ形式であっ…
オーウェルが書いた近未来世界から40年の節目を迎えたこともあって、今年読む最初の一冊には本作を選択した。この小説に目を通すのはもうこれで何度目かとなる。コンラッド「闇の奥」と同様、小生ごとき凡人では永遠にオーウェルの意図した真理へは辿りつ…
大谷翔平と山本由伸のドジャース移籍が決まった。彼らふたりがメジャーリーグの同じ球団でプレイするなんて、野球ファンにとっては夢みたいだ。しかも山本由伸の場合、医学やトレーニング方法が進歩したとは言え、野手と比較すれば故障するリスクの高い「投…
4K版「暗殺の森」が公開された。残念ながら劇場へは足を運べないが、原作を読み返したうえで改めてDVDを鑑賞することにした マルチェッロは少年の頃から自分のなかに潜む異常性に恐れ慄いていた。そして13歳の時に決定的な出来事が起きる。彼に性的な…
人間の本質に関する部分を現実味を伴って文章で表現するのは決して容易ではない。それを可能とするためには作者自身が少なからず生きるうえでの酸いや甘いを経験する必要があるのではないかと思うのだが、ここで驚くべきはマッカラーズが23歳の若さで、し…
D・H・ロレンスの書いた原書も、伊藤整の手掛けた翻訳書も、いずれも性愛に関する表現をめぐって「芸術か猥褻か」で論争の的になったと聞くが、実際本作に目を通してみれば、それは純然たる文学以外の何物でもなく、猥褻さは微塵も感じられなかった 新婚早…
配偶者や恋人以外の男女に心が傾くことを浮気と呼ぶのは実に言い得て妙だ。足が地につかず、まさに気持ちがフワフワと浮き立つ如きその感覚は、恥ずかしながら私自身にも経験がある。先日読んだ桐野夏生著「柔らかな頬」のなかで、不倫相手と密会する主人公…