一筆☆啓上

観た映画、読んだ小説の印象を綴ります

2023-10-01から1ヶ月間の記事一覧

映画「未来よ こんにちは」(2016)

個人的に、映画の要素として「感動」やら「ハートウォーミング」やらを求めていないので、通常ならこの何とも前向きな邦題の付けられた作品には一切見向きもしないところなのだが、今回は監督のミア・ハンセン=ラヴに関心があったのと、主人公の年齢が自分…

「心は孤独な狩人」マッカラーズ 著

人間の本質に関する部分を現実味を伴って文章で表現するのは決して容易ではない。それを可能とするためには作者自身が少なからず生きるうえでの酸いや甘いを経験する必要があるのではないかと思うのだが、ここで驚くべきはマッカラーズが23歳の若さで、し…

映画「心中天網島」(1969)

演出、撮影、美術、音楽。あらゆる面において豊かなイマジネーションを感じさせ、近松門左衛門原作の古典芸能と前衛的アプローチとを巧みに融合したハイブリッドな映像からは篠田正浩の才気がヒシヒシと伝わってくる意欲作だ 大阪天満の紙屋主人・治兵衛は妻…

映画「チャタレイ夫人の恋人」(1995)

つい最近、D・H・ロレンスの書いた原作を読んで感銘を受けたこともあり、自然と映画の方にも興味がわいた。心情描写を主とするあの小説の世界観をフィルム上で表現するのはかなりハードルが高く、どうせ男女の肉体的な交わりだけをクローズアップした官能…

映画「別れる決心」(2022)

今年劇場公開されたなかで個人的に最も注目していたのが本作。韓国映画に触れる機会が少ない私にしては非常にレアなケースだが、車のリアシートに座る男女を写した宣伝用ポスターにおいて、すでに心は離れてしまったかに見えるふたりの手が微かに重なってい…

映画「女の中にいる他人」(1966)

長谷川和彦がメガホンを取った「青春の殺人者」*1において、父親を刺殺し自首しようとする息子に対して母親が「これは我が家の問題で国や法律は関係ない」と出頭を引き留める場面は、市原悦子の鬼気迫る演技と相まって、鮮烈な記憶として私の脳裏に焼き付い…