一筆☆啓上

観た映画、読んだ小説の印象を綴ります

映画「昼顔」(1967)

60年近く前の作品とあって、表現自体は現在の映画と比較してオブラートに包まれてはいるものの、貞淑な人妻が体を売ることで抑圧していた「自分自身」を解放するという内容は結構衝撃的だ

昼顔(セヴェリーヌ)が娼館のマダムにキスをしようとする場面が出てくるが、セヴェリーヌは本来レズビアンなのかもしれない。それならば夫婦生活が上手くいかない件や彼女が頻繁に見る夢(男性に対する嫌悪や恐怖を示唆)の説明もつく

娼婦として、あくまでも仕事で男に体を開いた結果、トラウマを克服し、且つ自分の性的指向に気付いた。本作に対する私の解釈はこんな具合になろうか

夫が銃で撃たれ重い障害を負った後に、セヴェリーヌが夢を見なくなったのは夫婦の間で無理にセックスをする必要が無くなったからなのかも。そう考えるとラストでセヴェリーヌがうっすらと微笑む姿はかなり残酷に感じられなくもない

鑑賞中、昼顔に惚れるチンピラの顔がずっと気になっていた。ベルトルッチの代表作「暗殺の森」で少年時代の主人公に誘いをかける男を演じた俳優だったのだな

サンローランの衣装は全く古臭くなく、今でもすごく新鮮。よく「時代の最先端」なんてことを言うが、半世紀以上も先を見ていたのかと思うとただただ驚き以外にない

(2023-46)