一筆☆啓上

観た映画、読んだ小説の印象を綴ります

映画「バウンド」(1996)

この「バウンド」はウォシャウスキー姉妹がまだ兄弟だった時に製作されたもので*1、「暗殺者」*2の脚本で注目を集めたふたりが初めてメガホンを取った映画になる。たしか劇場公開時かなり話題に上っていて、私もビデオを借りた記憶はあるのだが、内容は全くと言っていいほど覚えていない。このところ観るのも読むのも不倫絡みが続いていたので、ちょっとした気分転換に改めて鑑賞してみた

窃盗による刑期を終え久々にシカゴへ戻った配管工のコーキーは裏社会の伝手でマンションの一室を改装する仕事に就く。その隣り部屋にはマフィアのシーザーと彼の情婦ヴァイオレットが暮らしていたが、レズビアンのコーキーは何となく彼女の魅力に惹かれ、やがてふたりの仲は恋愛関係へと発展していく。ある日、コーキーは、シーザーが預かったマフィアの金200万ドルを一緒に横取りしないかとヴァイオレットから話を持ち掛けられる

限られた予算内で出来るだけ面白い映画を撮ろうという意欲を窺わせる作品だ。舞台の主な部分を、隣の物音が筒抜けの薄い壁一枚で仕切られた部屋ふたつに絞って展開するシチュエーション的な設定が効果大。やたらにガンファイトなどでお茶を濁さず、あくまでもストーリーで語る姿勢は好感が持てる。何よりもLGBTQの言葉すら存在しなかった時代に「クライム・サスペンス」のジャンルでレズビアン・カップルを主人公にした点が新しかったのではないだろうか。欲を言えば、ヴァイオレットがもしやコーキーを裏切るのではないかみたいなドキドキ感がプラスされると尚良かった気もするが(コーキーには共犯者の裏切りで刑に服した過去がある)、それは少々高望みしすぎなのかも。いずれにせよ、処女作としては及第点以上の出来には違いない。携帯やPCの類は一切登場せず、劇中での連絡手段は固定電話のみ。そんなアナログさが妙に懐かしかった

  • "Bound" 109分 (米)
  • 監督:ラナ・ウォシャウスキー、リリー・ウォシャウスキー
  • 脚本:ラナ・ウォシャウスキー、リリー・ウォシャウスキー
  • 撮影:ビル・ポープ
  • 出演:ジーナ・ガーション、ジェニファー・ティリー、ジョー・パントリアーノ

(2023-53)

*1:姉ラナが2012年に、妹リリーが2016年にそれぞれ性転換手術を受けた

*2:S・スタローンとA・バンデラス共演のアクション映画、監督はR・ドナー。1995年