一筆☆啓上

観た映画、読んだ小説の印象を綴ります

映画「クラッシュ」(1996)

クルマの運転とセックスの関連性についてはしばしば取り沙汰されるが、様々なテクニックを用いて相手と一体になり、気持ちの昂ぶりによってエクスタシーを得るところなどは確かに共通しているのかもしれない

本作の内容もまたクルマの運転とセックス、双方のエモーショナルな繋がりを描いたものだ。ただし、ここで扱われているのは、クルマの衝突によって性的なエネルギーを解放するという、普通の感覚では理解し難い特異な世界であり、それはいかにも監督のクローネンバーグが好みそうな題材とも言える

常軌を逸したストーリーは、一種の珍しさも手伝ってか、なかなかに興味深い。しかしながら、登場人物たちが何を考え、どうしてそういう行動を取るのかが全くわからず、単に刺激的なエピソードを羅列しただけの展開で終わったのは残念でならない。J・G・バラードの書いた原作は未読なのでこれはあくまでも私の推測だが、映像で表現するには相当ハードルの高い小説なのではないだろうか

主人公の男とその妻が交わっている最中に彼女から発せられる言葉がかなりキワどくて生々しい。この会話部分のみでR18に指定されそうだ

  • "Crash" 100分 (加・英合作)
  • 監督:デヴィッド・クローネンバーグ
  • 脚本:デヴィッド・クローネンバーグ
  • 撮影:ピーター・サシツキー
  • 出演:ジェームズ・スペイダー、ホリー・ハンター、デボラ・カーラ・アンガー

(2023-57)